2011年10月17日月曜日

『パンナコッタ・フーゴ』あんたサイコーすぎるぜ!

恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より-

9月に発売されたジョジョの奇妙な冒険 第五部のスピンオフ作品「恥知らずのパープルヘイズ」。
タイトルからも分かる通り、ジョジョ史上でもっとも使い難いスタンド能力!?だったがゆえに、途中離脱させられたともっぱら噂だった、パンナコッタ・フーゴが主人公の小説です。

ジョジョの小説といえば、過去にも第五部の小説が発売されたことがありました。
ジョジョの奇妙な冒険 2 ゴールデンハート/ゴールデンリング (JUMP j BOOKS)
ジョジョ・オタとしてそちらももちろん読んでますが、正直うーんって感じ。
こちらの小説でもフーゴは登場しており、発売当時ファンはフーゴの活躍にものすごく期待したのですが、読んでみると・・・ちょっとガッカリな作品でした。

さて、そんなゴールデンハート/ゴールデンリングの失敗?がある中で、再度第五部の小説化として発売された「恥知らずのパープルヘイズ」ですが、
読み終わった感想としては、
超・傑作!!でした。
はっきり言えます、傑作であると。
ジョジョファンであれば、『必ず』読んで頂きたい。
そう強く推薦できるほど、ジョジョファンの期待を裏切らない作品です。
作者である上遠野浩平さんのジョジョへの「愛」と、作家としての仕事に対する「誇り」が見事に重なって完成された、本当に傑作ですッ!

※注:ここからの文章はネタバレを含みます。


キャラクターが本当に活きているッ!
そこにいるのは僕らが愛したあのキャラクター達の物語!!


「これは、一歩を踏み出すことができない者たちの物語である。」

冒頭のこの文章を見ただけで、自分はもうノックアウトでした。
こ・・・これは、ゴールデンハート/ゴールデンリングとは違う・・・。

この「恥知らずのパープルヘイズ」は、第五部が完結してから半年後の物語。
ジョルノはディアボロを倒し、パッショーネのボスになってます。
ミスタは実質ナンバー2になってます。
最初は、ミスタがフーゴを呼び出すシーンから始まります。
ここで久しぶり再開した二人。
昔は同じブチャラティの下で働いていた仲間でしたが、今やミスタは組織の大幹部。一方のフーゴは組織の下っ端という、どうにもならない上下関係が数ヶ月で築かれていて、その辺のなんとも言えないフーゴの感情が文章で見事に表現されているあたりも完璧すぎて涙がでます。
ここでのフーゴとミスタの会話の中で、ミスタは組織の実質ナンバー2にも関わらず、
自分ではナンバー3だと言いはるのですが、その辺の台詞がもうミスタそのもの。
ここを読んだだけで、あの「第五部の世界観がそのまま再現されている」とわかり、読むのが止まらなくなります。

フーゴが主人公なので、フーゴのキャラクターが活かされているのは当たり前かもしれませんが、
それでも「あのフーゴの心理描写や心の葛藤をよくここまで表現できな」と、感じずにはいられない程、ものすごくフーゴがフーゴをしてるんですw
もう、小説の中のフーゴは荒木先生が描いたフーゴと何一つ変わらないというくらいフーゴしてます。

ゴールデンハート/ゴールデンリングを読んだからこそかもしれませんが、ジョジョの作者でない第三者が、原作者が描いたキャラクターをここまで活かしきるとは、、、上遠野先生に合掌ですよ。

もちろん、回想シーンでブチャラティやアバッキオ、ナランチャも出てきますが、そのキャラクター全員がみんな活きています。
ボスとして君臨するジョルノの台詞なども、もう読んでるだけで精神が震えます。


オリジナルキャラクターもヤバいッ!

さらに、本小説のオリジナルキャラクター達もかなりいいキャラしています。

パッショーネの一員として、フーゴと行動を共にするシーラEとカンノーロ・ムーロロ。
ジョジョの奇妙な冒険の作品のテーマは「人間讃歌」。
このシーラEもカンノーロ・ムーロロもしっかりとこの「人間讃歌」のテーマに基づいて、キャラクターが存在しています。
敵である、コカキ、マッシモ・ヴォルペ、アンジェリカ、ドットリオも同様です。
スタンドバトルがイマイチ物足りないと感じたファンの方々もいるようですが、自分は全くそんなことは感じませんでした。
むしろ、荒木先生の作品は精神と精神のバトルを描いているのであって、その点ではこの「恥知らずのパープルヘイズ」は素晴らしいまでにバトルを再現しています。

敵味方問わず、スタンド能力から、言葉の言い回し、キャラクターの特徴まで、
どれをとってもジョジョとしか思えない程高いクオリティで表現されているキャラクター達が繰り広げる物語がこの小説を傑作にしています。


第五部までのジョジョ作品全てを伏線にした究極のストーリー

「恥知らずのパープルヘイズ」を読んでいて、
ファンなら「えッ!?」っと、思わず声を出してしまうシーンがいくつもあります。

最初は、ディアボロ時代にパッショーネがなぜここまで大きな組織に成れたのか。その大きな理由である麻薬について話が始まると・・・、
クラフトワークのサーレーや、ソフトマシーンのズッケェロなど、なんとまぁ懐かしいキャラクター達が出てくる出てくる。

さらにさらに、暗殺チームがなぜ組織を裏切ったのか。
暗殺チームイルーゾォの話やサンタ・ルチア駅前でミスタとギアッチョが戦った際に、ペリーコロが燃やした写真を復元したのは誰なのか。
そんな話がもりもり詰め込まれていて、第五部の話が全て伏線となって「恥知らずのパープルヘイズ」の作品を盛り上げていきます。

さらには、第五部だけにとどまらず、シュトロハイムの名前や、石仮面まで出てくる始末!!
それだけでは飽きたらず、重ちーやバットカンパニーの話が出たかと思うと、トニオ・トラサルディの意外な過去が明らかになったり・・・。

ファンとして本当に楽しめる、感動できる作品。

ここまで色々と書きましたが、最後にこの「恥知らずのパープルヘイズ」を読んで感じたことがあります。
それは、この小説はフーゴを主人公として描いた作品ではありますが、上遠野さんが本当に描きたかったことは「ジョルノ」の事だったのではないかと思います。
それが何故かというと、小説の中で最後の最後にジョルノがフーゴに語りかける言葉があるのですが、その台詞が、
ジョジョの第一部から続いているジョースター家とDIOとの因縁の戦い、その両方の血を受け継いでいる、そんな特異な存在であるジョルノだからこそ、この最後の台詞が言えるのだと思います。
このジョルノの言葉があって、初めて第五部が完結するのではないか!!
そんな風に感じざるをえないほど、非常に深い言葉です。

その言葉は是非、本を手にとって読んで見てください。

こんな素晴らしい感動を与えてくれた、荒木先生と上遠野先生に感謝を込めて。


かしこまり。