2011年3月9日水曜日

出版社の本質的価値 ~何故その仕事が、その業界が存在するのか~

先日、たまたま出版社の人にお会いして色々とお話しする機会があった。

自分が好きな人の本を出していた出版社であり、自分がiPhoneで本を読むことも増えてきているので「電子版は出さないんですか?」と質問してみた。
「ユーザーからの要望があれば出します」と言う返事とともに、「電子は出版社としての今後の在り方も問われるので何かと大変何ですよね」とポツリ。
「そんな大変何ですか?」と伺うと、「出版業界は今過渡期ですし、今後どうあるべきかはみんな模索しているんですよね。電子版出して作家さんが電子に慣れてくると、作家さん自身が簡単に自前で電子版出すようになる。そしたら、それこそ出版社要らないじゃないですか。でも、僕はそんな中でも出版社の存在意義ってあると思うんですよね。」
といった内容のお話をした。

こういった話は最近ニュースやtwitterなどではよく聞く話
というより、過渡期と言われている業界はみんなこういった悩みを抱えている。
自分も人材業界(派遣ではなく紹介だけどね)に身を置いているけど、一時のバブル期が去ったあとの業界の落ち込み様は半端無かった。業績よりも業界のモチベーションの下がり方が凄かった。派遣切りなどの世論的な後押しもあったし。
出版社と同様に、人材業界も今後の存在価値を問われていると業界だと思う
ゲーム業界(小売やハードメーカー)や、音楽業界(レコード会社)もそうだろう。


でも、そんな時期だからこそ、お話頂いた様な「存在意義」や「存在価値」についてもう一度本気で考える時期なんじゃないかと思う。そこを見据えた上で、過去に捉われずに存在価値を追求した行動をしていかなくては行けないのではないかと感じている。

少しはなしがずれるけど、自分の場合も、仕事をする際に本質を意識する様に日々心がけている。
自分は運が良く、職場や上司には恵まれてきていたので、「何で俺らの仕事が必要なのか常に考えろ」「同じ価値を他の方法で提供する事との違いを考えろ」と常々教えてくれた。
たかだか4年ほどのペーペーが見い出した人材紹介会社の存在価値の一つの答えは「精度」だ。
良くお見合いに例えられる人材紹介だけど、本当にそう思う。
お見合いを仲介する仲人さんも「精度」が信頼の証だ。
実際、お見合いをしたところでそう簡単に結婚までいかない。そりゃそうだ。

人生のパートナーを決めるんだから。
どんな人が好みかとか、過去にどんな人を好きになったかとか、そんな事を聞くのは当たり前だけど、
もっと重要なのは「今後どんな自分で在りたいか」を見いだす事。
紹介で良くありがちで、自分はやらない様に心掛けているのが条件マッチング。これは精度がそんな良く無い場合が結構ある。
例えば、婚約者の希望条件、「年収800万円以上」「趣味が合う人」「タバコは吸わない」とか。しかし、そんな条件に合う人なんていっぱいいるケースが多いし、本当に大事なのは何故その条件を望んでいるのかということ。
そういった部分を見い出して、企業と本人の未来の相性まで見極めて紹介する。
そのブレ幅が以下に少ないかかが精度が良いってこと。
この精度は現状のIT技術では実現できてない。
だから人材業界の存在価値はまだまだあると個人的には考えている。
必要が無くなることがあるとすれば、企業や個人が働いてくれれば(働ければ)誰でも(どこでも)良いと考えるようになる時だろう。

話を戻し、冒頭の出版社の本質的な価値について考えてみる。
自分が考えた出版社の本質的な価値は、「見いだす事」と「求めている人に届ける事」が出版社の価値なんじゃ無いかと思う。
面白い作品を見つける、もしくはその可能性のある作家を見いだす、そして育てる。
また、それらを求めている(求めていそう)な人に届ける事。
これが出版社の本質何じゃ無いかと。


この価値を提供出来るのであれば、別に今の出版社の形態である必要はないと思う。
食の評論家の人達って会社組織ではなく、個人で動いている人が多いイメージがあるけど、出版業界もフリー、もしくは少人数のグループで動いていくようになるのではないか。
本の印刷が必要な場合は印刷会社に頼めばいいし。


ワイン業界では、クルティエ(仲買人)と呼ばれる人がいる。
ワインが生産者からネゴシアン(卸商)に渡る橋渡しをしている人たちで、ワインの鑑定や価格評価、競売などを行う。
クルティエは情報が命の為、ワイン生産者の情報を自身の足で集める、ワインのプロ中のプロだそうだ。(
参考資料 部長 島耕作2巻w)
出版業界もこのクルティエの様にプロ中のプロが残り、個人で生きていく職業になっていくのではないだろうか。


それはそれでかっこいいと思うんだけど、如何でしょう?


かしこまり

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